男女の出会いってどこに転がっているかわからない
山手線、品川駅での出来事だった。
俺が、駅に降りると黒山の人だかりがしていた。そもそも、俺は物見高い性格なので人ごみを割って入り、一番前にたったのだった。
すると、背の高い、物凄くプロポーションがよく、結構な美人が、身長172〜3Cmでがっしりとした男性に向かい「ちょっと、あんた認めなさいよ。何も警察に突き出そうって言っているんじゃないでしょ。痴漢をしたことを認めて、きちんと謝罪をすればそれでいいって、そう私は言っているだけなのよ」と、凄んでいるところだった。
俺は“こいつは面白いところに出っ食わしたもんだぜ”と、興味しんしんとなって成り行きを見守っていた。勿論、その美人が窮地に陥ったら助けることを考えていたことは、当然だったが。
「うるせ〜な、俺は何もしちゃ〜いねえって言ってんだろ。言いがかりもいいとこだぜ」と、男性は凄みを利かせて言った。
その瞬間、美人は柔道で言うもろ手狩りのような技で男性からテイクダウンをとると、一気に三角締めに持って行った。ミニスカからパンツが見えることも、全くいとわずに、流れるような動作で一気に決めたその動きに、俺は“ただ者じゃない”と感じ、更に興味を持った。
しかし、彼女の技のキレと確実さは物凄く、相手の男性はあっという間に声も出ないほどの痛みを感じたのだろう。顔色は一気に青ざめ、血の気がなくなった。
見物人の中に格闘技経験者がいれば、これは危険だと感じたのだろうが、そんな奴は一人もいなくて、見ていた男性のほぼ全員はその美人のスカートの中を凝視していたようだ。
危険を感じた俺は「もういいだろう、それ以上やったらこの男、どうなるかは君が一番知っているだろう。もうやめよう、そして警察に任せた方がいい」と、停めたのだった。
それから三ヵ月が経った晩秋の頃、彼女と偶然にあるBARで、本当にばったりと言う感じで出会ったのだった。
そのBARに俺は、月に二〜三回はいくのだが、彼女を見たのは初めてだった。
その夜はカウンター席が、彼女の隣しか空きがなく、本当に偶然彼女の隣に座ったのだった。
彼女に軽く会釈をして席に座ると「あ!あの時の方ですよね」と、俺の方を向いて言うので、俺も彼女の方を見ると、何とあの品川駅で武勇伝をつくったあの美人だったのだ。
「あっ、ああ〜、あの時の方でしたか」と俺も応じて、何となく会話が成立して、話しが弾んだと言う訳。
彼女は中学生のころから総合格闘技を学んだと言うことだった。
俺も総合格闘技をやはり中学からやっていたので、偶然の一致が面白かった。そして、話しは総合格闘技の事になり、いつしか夜の更けることも忘れて話しこんだものだった。
彼女は俺に停められた時に“この人、物凄く強いのだろう”と、直感的に感じて痴漢男性を放免したと言うのだった。
事実俺は結構強いのだが、それを判ると言うことは、彼女も相当強いと言うことだ。
その彼女は、現在俺の恋人になていて、もうすぐ結婚する。
男女の出会いって、どこに転がっているものなのか、全く判らないものだった。
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